盛岡市紺屋町の駒井(旧姓高橋)洋子さん(77)は15日、戦死した兄の手紙に記された風景を求め山陰への旅に出発する。目指すは島根県北東端に位置する大根(だいこん)島。兄が海軍の訓練生だったころに訪れ、その情景の素晴らしさを洋子さんへの手紙につづった場所だ。島を訪れる翌16日は、兄が24歳の若さでこの世を去った命日。60年以上にわたって島にあこがれを抱いてきた洋子さんは、現地での兄との「対話」を心待ちにしている。
洋子さんの兄作衛さんは1943年10月、22歳の時に学徒動員で海軍に入隊。教育課程の一時期を鳥取県の美保航空隊で過ごし、このころ訪れた大根島の様子を、洋子さんにあてた手紙で伝えている。
「春霞 大根島は 静かなり…」と一首記され、末尾には「洋子の幸福を祈る 将来一度 山陰を旅されたし」との言葉。上部には島の位置を示す地図が描かれていた。「きっと美しい所なんだろう」。当時15歳だった洋子さん。以来、島はあこがれの地となる。
教育課程を終えた兄はその後、鹿児島基地に配属。45年4月16日の沖縄戦で米軍機を迎え撃ち、帰路に鹿児島上空で戦死した。入隊後は一度も顔を合わせることなく兄は帰らぬ人となった。
7つ年上の作衛さんは本当に面倒見の良い兄だった。洋子さんは「登山や映画、東京見物にも連れて行ってくれた」と懐かしむ。それだけに「兄が歩いた島を訪れてみたい」との思いは募るばかりだったが「一人で行ける場所でもなく」月日だけが流れた。
ところが半ばあきらめかけていたつい先日、洋子さんは家に送られてきたあるパックツアーのチラシに目を止める。どこかで見覚えのある地図。次の瞬間、兄が手紙に記した地図とつながった。日程には、大根島も組み込まれ、すぐに参加を申し込んだ。
旅には長女慶子さん(57)が同行する。15日に盛岡をたち、兄の命日の16日に大根島に足を踏み入れる。63年越しの願いがもうすぐ実現する。
「ようやく来ました。幸せに暮らしていますと伝えたい」。手紙に記された兄の言葉に答えるつもりだ。
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2007年04月15日
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